濃厚なスモッグに満たされた、2030年、東京。
「なんだかめっきり寒くなりましたね。スモッグの原因が温暖化なんていうから、暑くなるのかと思ったら」
顔見知りの店員はそう笑って、日常の終わりをさらりと告げる。
「今までお世話になりました。また、お越しください」
1通の手紙が届いたのは、その日のことだった。
「・・・全日本環境保安科学研究所・・・」
それに記載されていたのは、簡潔に言えば治験アルバイトのお誘い。
目を疑うような報酬に惹かれ、自らの生きる価値を探していた彼は車に乗り込む。
その灰色で無機質な部屋で起こる、惨殺ゲームを知らないままに。